死者の短剣 惑わし(ロイス・マクマスター・ビジョルド)

五神教シリーズと同じく、ビジョルドの構築したファンタジー世界が堪能できる。 しかし、あくまでも序章である、と信じたい。なぜなら、1巻は、地の民の娘フォーンが、「悪鬼」を退治する技を伝える湖の民の男ダグと、「悪鬼」に襲われた事件を通して知りあ…

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉

ミステリは日本ものが好きだけど、SFとファンタジーは海外のものが好き。 という傾向があり、日本作家のSFはほとんど読まないんだけど、この作品には衝撃を受けた。ゲストが来なくなったヴァーチャル世界のAIたちが、自分自身とこの世界「夏の区界」の存…

女悪魔の任務(魔法の国ザンス19巻)(ピアズ・アンソニィ)

作者は女悪魔メトリアが大好きなんだろうなぁ。 17巻で人間と結婚して魂を得た女悪魔メトリアが19巻の主役。 なんとかして、コウノトリを呼びたい(子供が欲しい)という思いから、大活躍する。 18巻では魂と共に良心を得てしまったメトリアからこぼれ出た悪…

ドレスデン・ファイル2(ジム・ブッチャー)

電話帳に「魔法使い」と掲載しているハリー・ドレスデンが主役の現代ものハードボイルドのファンタジー。 ハリーは細身長身を黒づくめのくたびれた私立探偵風の格好をし、女難の雰囲気が漂い、気の強い女性に、古風な騎士道精神を発揮しては、当の本人から「…

ドレスデン・ファイル3(ジム・ブッチャー)

第3巻のゲストはヴァンパイアと妖精の女王と悪霊。 妖精といっても、第1巻に出てきた甘いミルクが好物の小妖精レベルではなくて、敵のヴァンパイアの女男爵と同列の恐ろしさと厄介さと狡猾さを併せ持つボスキャラですが。 今後も登場して、ハリーを困らせ…

テメレア戦記1(ナオミ・ノヴィク)

アン・マキャフリーの「パーンの竜騎士」好きにはたまりませんね。 時代は、皇帝ナポレオンが世界征服に向けて張り切っている頃。 空軍が保有するドラゴンが少ないために、英国はフランスに苦戦を強いられている。 英国海軍の将校ローレンスは、捕虜にしたフ…

●セブンスタワー 1(ガース・ニクス)

太陽がなく、サンストーンの輝きだが光を与える不思議な世界が舞台。 氷原にそびえたつ7つの塔の中で育った少年タルが、突然、父を失い、世の中から見捨てられ(役人のいじめを思い出すだけで、腹が立つ)、塔の外へと放り出されてしまう。 しかし、塔の外に…

炎の戦士クーフリン(ローズマリー・サトクリフ)

ケルト神話のクーフリンの話ですが、北欧と同様に、血みどろな神話ですね。 ほっそりとした黒髪の美少年ながら、太陽神の血を引く勇猛果敢な戦士というクーフリン。 その割に、ものすごいギャグ飛ばしていました。 口から泡をふきながら、脳天から血の霧を飛…

獣の奏者1 闘蛇編(上橋菜穂子)

闘蛇(人間がまたがって戦うほど、でかい蛇)も、王獣(スフィンクス?)も、ミツバチさえも、ヒロインのエリンの目を通して、生き物が愛おしく、力強く、魅力的に書かれている。幼くして、母に命がけで助けられ、同時に母以外の親族に見捨てられるという経…

悪魔の黙示録 デモナータ6(ダレン・シャン)

とうとう、起承転結の転に来たデモナータ。 途中、「えええ、そこで終わるの」と思ったけど、そういうわけでもなかった。 ただし、前作の伏線がそこにきたのかー、とか、BECを再読させてくれ、とか思う内容。 最初から10巻の構成を考えて本にしてあるから、…

裏切りの月に抱かれて(パトリシア・ブリッグズ)

同じ作者による「ドラゴンと愚者」と同様に、予想外に面白かった現代ロマンティックファンタジー。 いわゆるハーレクイン物だが、きっちりとウォーカー(生まれつきコヨーテに変化できる)、人狼(噛まれると、そうなる)、ヴァンパイア、魔法使い(これは曖…

戦士志願(ロイス・マクマスター・ビジョルド)

母親の胎内にいたころに遭遇した事故のせいで、身体的ハンディキャップを背負っているマイルズ。 知力検査には絶対の自信があったが、体力検査の失敗で士官学校入試に落ちた失意の彼は、ボディガードとその娘を連れ、非合法に大宇宙へと飛び出した。 わらし…

彩雲国物語13 黎明に琥珀はきらめく

藍将軍の次は、吏部次郎の李コウユウ(漢字変換に疲れた)が政治的な罠にかかった。 秀麗は尊敬する師匠である彼を助けるため、奔走し、ライバル清雅と対決する。 だんだんとキャリアウーマン化していく秀麗の先行きが心配です。 彩雲国物語 黎明に琥珀はき…

トロール・フェル(キャサリン・ラングリッシュ)

母を昔に亡くし、今、父も亡くした少年が、葬儀の晩にいきなり、叔父に連れ去られる。 少年の手首を縄で縛って馬車にくくりつけるような、本気でヤバイ、一卵性双生児の2人の叔父。まさに、外見も中身も鬼。 さらに、極悪非道(お前の物はオレの物、を実践)…

うちの一階には鬼がいる!(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)

連れ子同士の再婚で形成された家庭にあって、著者お得意の本気で憎たらしいリアルな子どもたちが、鬼(実父あるいは義父)と対決する話。 鬼が実の息子と義理の息子にそれぞれ1セットずつ贈った謎の化学薬品セットが、さまざまな騒動を引き起こす面白さと、…

空色勾玉(荻原 規子)

イザナギを思わせる神を信仰する(というか、天照、月読、スサノオを思わせる兄弟が治めている)不老不死派の一族と、イザナミを思わせる神を信仰する輪廻転生派の一族の争いに、巻き込まれる少女の話。 なんだか、これも、氷室冴子の中断した物語を思い出し…

これは王国のかぎ(荻原 規子)

氷室冴子のシンデレラシリーズ(古っ)を思い出した。 現代社会で失恋したはずの女の子が、いつの間にやらアラビアンナイトの世界に紛れ込み、セーラー服を着た精霊(ハクション大魔王のような感じの)になってしまうという話。 これは王国のかぎ (ファンタ…

サンシャイン&ヴァンパイア 上下(ロビン・マッキンリィ)

サンシャインという名の魔法使いの女性と(恋人は無口なマッチョだ)、小柄で美しいとは言い切れないヴァンパイア男の友情以上恋人未満な関係・・・ 女は、ただ愛されているだけじゃダメなのよ、と言わんばかり。 同じ作者のダマール王国物語(正統派ファン…

ゴースト・ドラム 北の魔法の物語(スーザン・プライス)

極寒の大陸の北の国では、容赦のない物語しかないのだろうか。 ニワトリの足が生えた魔女の家、なんて面白そうじゃないかと、図書館で借りた。 ところが、夢も希望もなく、淡々と悪意ある敵に倒されていく善意の人たち。 皇帝と結婚した奴隷の娘、 命がけで…

チャリオンの影、影の棲む城(ロイス マクマスター ビジョルド)

SF作品の多い作家ですが、ファンタジー作品しか読んだ事がない。 でも、 スピリット・リング チャリオンの影 影の棲む城 のいずれも、面白いです。 登場する女性の気が強くて、作中の言葉によれば「鋼のように」強靭で、「剣のように」攻める女性ばかり。 「…

アルテミス・ファウル オパールの策略(オーエン・コルファー)

シリーズ4作目だが、ああっ、面白い。 3話で悪の犯罪天才少年アルテミス・ファウルが改心してしまって、続編はどうなるんだろうと思ったが、妖精によって記憶を消去されたせいで、また元通り悪ガキに戻っていた。 冒頭で主要キャラクターが消されてしまうの…

空の境界 上下

読んだのはノベルズである。 解説(笠井潔)がこれほど難解で長いのか。 解説の解説を要求する。 …全く内容とは関係ない。 無愛想な美少女のヒロイン、温和な語り手の青年(というか少年?)。 2人を取り囲むスーパーお姉さま。 どこかで見たことのあるよう…

ドリームハンター 虹のオペラ、震える大地(エリザベス・ノックス)

1900初頭の南半球(ニュージーランド)という設定だが、まったくの別世界。 突然現れた異次元世界「プレイス」、「プレイス」に入り夢を持ち帰って他の人に見せることができるドリームハンター、「プレイス」に入る素質は持つレンジャー、そして「プレイス」…

アルテミス・ファウル 妖精の身代金(オーエン・コルファー)

アルテミス・ファウル、というタイトルだが、この本では、アルテミス自身の活躍が不足。 それより地下の妖精族の警察官であるホリーの活躍が生き生きしている。 シリーズの1巻ということで、どうしても地下に潜んでいる妖精やトロール、ゴブリンたちの世界の…

マジック・フォー・ビギナーズ(ケリー・リンク)

幻想小説と呼ばれるジャンルがある。 ファンタジーとは異なる。 指輪物語が直木賞をとる系とすれば、幻想小説と呼ばれるのは芥川賞をとる系の作品だ。 これが、オチがないことが多くて、実はとっても苦手。 でも、ヒューゴー賞やネビュラ賞、ローカス賞、英…

時の町の伝説(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)

疎開先の駅に着き、初めて会う親戚にドキドキしているヴィヴィアンのところへ、傲慢な態度の少年ジョナサンと、わがままいっぱいの少年サムがやってきて、彼女を時の町に連れて行った。 時の町は、全ての時の流れ、歴史から切り離された町。 安定期と呼ばれ…

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!(ジャスパー・フォード)

国民最大の趣味が文学だったら? という世界で、特別捜査機関(スペックオプス)で働く文学刑事サーズディ・ネクストの活躍する話。 シェークスピアやトマス・モアやブロンテ姉妹といった古典文学が、芸能人ネタのように熱い話題になる世界。 スペックオプス…

アークエンジェル・プロトコル(ライダ・モアハウス)

何に分類すればいいのか、判らない本。 ハヤカワSF文庫 アメリカ私立探偵作家クラブ賞を受賞作 やさぐれた元警官の女探偵のハードボイルド 2076年が舞台 世界大戦後に荒廃したニューヨーク サイバー犯罪(インターネットへの接続は頭に移植した受信機を通し…

海駆ける騎士の伝説

ものすごい美人で、気が強くて、男勝りな姉。 姉には頭があがらないけど、ちょっと短気なところもある、気のいい弟。 好きな男の子に意地悪しちゃう小さな女の子。 ジョーンズの作品によく出てくるポイントはクリア。 でも、小さな女の子の活躍が少ないので…

血の呪い

デモナータ5作目は、1作目、3作目に続いて、グラブス少年。 命をかけて救った異母弟ビルEよりも、魅了的な少年ロックとの友情が大事なお年頃。 なぜかしら周囲をひきつける子どもっていうのは、いますね。結構意地悪だったりするんだけど。 前作ベックが健気…