こわれた腕輪 ゲド戦記Ⅱ

テレビ映画「ゲド戦記、たたかいの始まり」は、影との戦いとこわれた腕輪を適当にまぜた作品になっていた。
ヒロインのアルハは、テナーとアルハという2つの名を持つことが不思議だった。
優れた成績を取って大巫女の後継者となり、神殿の地下迷宮の道を教えてもらうという設定も、しっくり来なかった。
原作を読んで、特にテナーを主人公として書かれたこちらを読んで、ようやく納得。
少女が、大巫女アルハという名前の奴隷から、「自分」というものを手に入れてテナーに成長する物語が、欠如していたのである。
 
アチュアンの墓所には、玉座の神殿、大王の神殿、兄弟神の神殿がある。
玉座の神殿には、「名なき者」が祀られて、ただ一人の巫女アルハが仕えている。
前の大巫女アルハが亡くなったときに生まれたテナーは、アルハの生まれ変わりとして神殿に連れて行かれた。
「名なき者」に喰われてしまった者、という意味の名前アルハを付けられたテナーは、個人として扱われることはなく、生まれ変わりとしてしか扱われず、孤独に成長する。
テナーが15歳になったとき、大巫女しか入れない地下迷宮に魔法使いの男が侵入していることに気づく。
テナーの下男によって捕らえられた男はハイタカと名乗った。
 
自由を得たとき、テナーは自由の重みに泣く。これまで迷わなかったことに迷う。
一緒にいてくれる?とテナーに聞かれたゲドは、為すべきことがあるから無理と答え、さらにテナーを惑わせる。
作者は、あくまで、テナーの自立を要求するのだ。
世の中、そんなに甘くない。