ライラエル

「サブリエル」の続巻。
「サブリエル」では、アブホーセン(七つのベルを駆使して、冥界に入り、悪霊を追い返す)であるサブリエルと、唯一残された王族であるタッチストーンが、与えられた使命を果たしていく物語だった。
今回は、彼ら2人の子供であるサムと、クレア族の少女ライラエルの物語だが、2人とも与えられた使命を知らない。
「ライラエル」の最後になって、ようやく彼ら2人の本当の使命が明かされる。
そこに至るまで、常に逃げ腰のサムのへたれっぷりに苛立ちさえ感じてきたが、ようやく同情する気分になった。
 
主人公ライラエルは、未来を知るクレア族の娘。
金髪碧眼に浅黒い肌を持つ一族にあって、父親が不明のライラエルの容貌は、黒い髪、茶色い瞳、青白い肌。
14歳のライラエルは、次々と自分より年下の少女たちが、先視の力を得ていく様子に居たたまれない。
しかし、ちょっとした偶然から、図書館で働く司書となる。
謎と魔力に満ちた図書館で、ライラエルはやり甲斐と、「不評の犬」という女友達を得る。
「不評の犬」はサブリエルのモゲットと同じく、人間の言葉を話すフリーマジックで出来た謎の存在だが、見た目は黒地の褐色のぶちのある大きな雑種犬で、性格は口うるさいおばさんである。
 
一方、国王夫妻の第二子として生まれたサムは、古王国ではなく、壁の向こうのアンセルスティエールで教育を受けた17歳の少年である。
姉が王族としての使命感に燃えており、資質の点からも、必然的に母方のアブホーセンを継ぐことを期待されている。
が、本人にその気はないらしい。
ある出来事から、冥界に対して恐怖心を抱いているサムは、事あるごとに逃げ出そうとしてる。
美しく成長したライラエルにちょっかいをだそうと虎視眈々だが、あっさりのライラエルに切り捨てられている。
  
今回は冥界の描写よりも、チャーターマジックやフリーマジックの様子が生き生きとしている。
ライラエルの使命は明らかになったが、サムのはまだ不明だ。
次巻「アブホーセン」が楽しみ。

ライラエル―氷の迷宮〈上〉 (古王国記)

ライラエル―氷の迷宮〈上〉 (古王国記)

ライラエル―氷の迷宮〈下〉 (古王国記)

ライラエル―氷の迷宮〈下〉 (古王国記)