われはロボット/アイザック・アシモフ

2003/5/17
面白かった。
レイ・ブラッドベリと相性が良くなくて、「古典的SF名作なんて」と思っているところがあったが、
夏への扉」「リングワールド」に引き続き、この本も無茶苦茶面白かった。
ロボットを製作するUSロボット社のスーザン・キャルヴィン博士に
雑誌のインタヴュアーが質問するという形式で9編の短編が収録されている。

偉大なロボット心理学者であるキャルヴィン博士がロボットに捧げた50年は、
ロボットの急速な進歩の歴史と一致する。
「彼女は人間じゃない」とまで言われた、冷たい感じのする博士が、
彼女の人生を振り返りつつ、ロボットの進化を語る。
◆①ロビィ
スーザンが入社する前の1998年の話。物言わぬ子守りロボットのロビィと女主人の少女の友情。
◆②堂々めぐり
2015年ごろ、USロボット社の技師であるドノバンとパウエルが水星の表面でトラブルに陥り、
絶対服従のしゃべるロボット「スピーディ」に物を取ってくるような指示を与えたが、帰ってこない。
スピーディに生じたトラブルとは?
◆③われ思う、ゆえに・・・
ドノバンとパウエルが②の半年後、中継ステーションで頭を抱えていた。
思考するロボット「キューティ」は彼らを見下し、とうとう造物主を自ら見出したのだ。
◆④野うさぎを追って
③のさらに半年後、ドノバンとパウエルは小惑星にいた。
彼らは7体1組で作業するロボットのうち、司令塔役の「デイブ」が、
イレギュラーに誤作動するというトラブルに頭を悩ませていた。
◆⑤うそつき
2021年、突然変異の人の心を読み取るロボットに振り回された、
スーザンを含めたロボットのエキスパートたちの話。
◆⑥迷子のロボット
2029年、人間に対して明らかな優越感を抱くようになったロボットの「ネスター」は
、機密を抱えたまま、見かけ上は同じタイプのロボットに紛れ込んでしまった。
ネスターを探し出すために地球外の基地に呼び出されたスーザンとの知恵比べ。
ロボット工学三原則が最も強烈に意識する話。
◆⑦逃避
⑥の直後、ライバル会社から持ち込まれた、星間ジャンプに関わるが
、電子頭脳(ブレーン)を壊してしまうような方程式が持ち込まれた
。スーザンはブレーンをなだめすかしながら、問題を解かせるが、
その直後からブレーンが奇妙な応答をするようになってしまった。
◆⑧証拠
偉大な政治家であったバイアリィが、市長選の際に、
彼がロボットであるという疑惑を持たれた際の話。
◆⑨災厄のとき
マシンたちが、ひそやかに、人類を守り始めた話。

続けて読むことによって、ロボットが、その思考の部分が、
発展していく様子がわかる。
③と⑤がユーモアがあって面白かった。
⑥と⑨は、テーマそのものが、ロボット工学三原則であり、
後世のSFに大きな影響を与えた話だと思う。
とにかく、読まねば。
SFのエッセンスが凝縮された本でありながら、SFの入門書として読める内容だと思うし、
日本語の文章も(小尾芙佐氏だから当然だが)、平易で漢字の無駄遣いがなく、
読んでいても、見ていてもバランスが素晴らしい。