うちの一階には鬼がいる!(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)

連れ子同士の再婚で形成された家庭にあって、著者お得意の本気で憎たらしいリアルな子どもたちが、鬼(実父あるいは義父)と対決する話。
鬼が実の息子と義理の息子にそれぞれ1セットずつ贈った謎の化学薬品セットが、さまざまな騒動を引き起こす面白さと、子どもたちが理解しあい鬼と打ち解けていく鉄板の展開が、楽しい。

うちの一階には鬼がいる! (sogen bookland)

うちの一階には鬼がいる! (sogen bookland)

空色勾玉(荻原 規子)

イザナギを思わせる神を信仰する(というか、天照、月読、スサノオを思わせる兄弟が治めている)不老不死派の一族と、イザナミを思わせる神を信仰する輪廻転生派の一族の争いに、巻き込まれる少女の話。
なんだか、これも、氷室冴子の中断した物語を思い出した。

空色勾玉(そらいろまがたま) (〈勾玉〉三部作第一巻)

空色勾玉(そらいろまがたま) (〈勾玉〉三部作第一巻)

これは王国のかぎ(荻原 規子)

氷室冴子のシンデレラシリーズ(古っ)を思い出した。
現代社会で失恋したはずの女の子が、いつの間にやらアラビアンナイトの世界に紛れ込み、セーラー服を着た精霊(ハクション大魔王のような感じの)になってしまうという話。

これは王国のかぎ (ファンタジーの冒険)

これは王国のかぎ (ファンタジーの冒険)

サンシャイン&ヴァンパイア 上下(ロビン・マッキンリィ)

サンシャインという名の魔法使いの女性と(恋人は無口なマッチョだ)、小柄で美しいとは言い切れないヴァンパイア男の友情以上恋人未満な関係・・・
女は、ただ愛されているだけじゃダメなのよ、と言わんばかり。
同じ作者のダマール王国物語(正統派ファンタジー)の「英雄と王冠」でも、似たような三角関係だったような気がする。

ラスボスが形容し難い存在感と形状を示してたなぁ。
最後までたどり着くと、意外にどうでもいい、そんな存在感だった。

サンシャイン&ヴァンパイア〈上〉 (扶桑社ミステリー)

サンシャイン&ヴァンパイア〈上〉 (扶桑社ミステリー)

サンシャイン&ヴァンパイア〈下〉 (扶桑社ミステリー)

サンシャイン&ヴァンパイア〈下〉 (扶桑社ミステリー)

ゴースト・ドラム 北の魔法の物語(スーザン・プライス)

極寒の大陸の北の国では、容赦のない物語しかないのだろうか。
ニワトリの足が生えた魔女の家、なんて面白そうじゃないかと、図書館で借りた。
ところが、夢も希望もなく、淡々と悪意ある敵に倒されていく善意の人たち。
皇帝と結婚した奴隷の娘、
命がけで皇子を育てた奴隷の女、
才能に溢れた若い魔女、
宮廷の争乱から逃げ出した知恵ある兵士たち。
 
降りかかる不運を、真正面から受け止め、跳ね返すことはないのか!
という感じの重い物語だった。
 
ロシア民話の「石の花」もこんな感じだったような。

ゴースト・ドラム―北の魔法の物語 (Best choice)

ゴースト・ドラム―北の魔法の物語 (Best choice)

石の花 (岩波少年文庫 (3111))

石の花 (岩波少年文庫 (3111))

チャリオンの影、影の棲む城(ロイス マクマスター ビジョルド)

SF作品の多い作家ですが、ファンタジー作品しか読んだ事がない。
でも、

  • スピリット・リング
  • チャリオンの影
  • 影の棲む城

のいずれも、面白いです。
登場する女性の気が強くて、作中の言葉によれば「鋼のように」強靭で、「剣のように」攻める女性ばかり。
 
「チャリオンの影」と「影の棲む城」は、五神教シリーズの2作品。
滅多にあることではないが、神々が目に見える奇跡を行なうことがあるという世界である。
父神、母神、姫神御子神に、半神半魔の庶子神の五柱が、直接手を下す代わりに、聖者(運悪く神に選ばれてしまった人)を通じて、人間界に奇跡を行なうのである。
 
「チャリオンの影」の主人公カザリル(35歳男性。人生に疲れて身も心もボロボロです)は、姫神庶子神の奇跡をその身に受けた。
そして、思い通りにならない人生と、神の気まぐれによる運命に嘆いた。
しかし、何とか運命に立ち向かおうと、仕えるイセーレ国姫を救うため、酷い状態(死人を温めなおしたような、と言われている)で奔走することになる。
  
「影の棲む城」の主人公イスタ(40歳の国太后。孫がいる。老いた母を看取り、ようやく第二の人生を歩もうと城から逃げ出す)には、庶子神が新たな役目を与えようと近づいてくる。
しかし、若い頃に母神の聖者となりながら見捨てられた経緯から、イスタは庶子神や他の神々に毒づく。
結局、運命により「魔」が住む国境の城に導かれ、アリーズとイルヴィンという壮年の兄弟(40歳前後)を救うことになる。
 
カザリルはひたすら耐え忍び、イスタはひたすら(神に)毒づく。
どちらも徹底している。
登場する人物は老いも若きも、男女問わず人間味がある。
特に、「影の棲む城」のイスタ・アリーズ・イルヴィンの皮肉の応酬(これまでの人生への恨み節がこもっているのが、他の和製ライトノベルファンタジーの美男美女とは異なる)や、イスタの母に仕えた貴婦人レディ・フウェルタルとイスタのやりとりが好きです。
もちろん庶子神(セクハラのトリックスターだ)とイスタ、イセーレとカザリルの言い合いは、イスタとイセーレの好戦的な親子が最高に魅力的です。
ローカス賞ネビュラ賞ヒューゴー賞を総なめにしたのも納得の影の棲む城はもちろん、チャリオンの影も非常に面白い。
 
SFも合わせて、次々に翻訳されそうなので、楽しみです。
とりあえず、次はSFでしょうね。

チャリオンの影 上 (創元推理文庫)

チャリオンの影 上 (創元推理文庫)

チャリオンの影 下 (創元推理文庫)

チャリオンの影 下 (創元推理文庫)

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)

アルテミス・ファウル オパールの策略(オーエン・コルファー)

シリーズ4作目だが、ああっ、面白い。
3話で悪の犯罪天才少年アルテミス・ファウルが改心してしまって、続編はどうなるんだろうと思ったが、妖精によって記憶を消去されたせいで、また元通り悪ガキに戻っていた。
冒頭で主要キャラクターが消されてしまうので、衝撃を受けた。
実は生きているのでは?と思ったが、そこまで優しくなかった。
最近の児童文学は現実的である。
 
タイトル通り、悪の天才科学者のピクシーで、2作目でアルテミスたちによって捕まってしまったオパール・コボイの復讐劇である。
友情の物語でもあるのだが、子どもなのは大人びたアルテミスだけなので、非常に大人びた友情物語なのである。
相変わらず、体質にさまざまな秘密を隠し持ったゴブリンの窃盗犯・マルチも超活躍する。
無駄に厚くならず、どの作品も飽きさせない、なかなかのシリーズである。
映画化もされるそうだし、大人が読む分にはハリー・ポッターよりも、読みやすいように思う。
頑張れ。

アルテミス・ファウル―オパールの策略

アルテミス・ファウル―オパールの策略